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アンチコンピュータ戦略との戦い

niconicoにて「人類vs最強将棋ソフト 第2回将棋電王戦開催記念イベント | 勝てたら100万円!ニコニコ本社で誰でもトライアルマッチ」という企画が始まり、本日その初日が行われインターネット生放送されました。9人のアマチュア強豪が人類代表として挑んだ初日の結果は、コンピュータ将棋代表のGPS将棋が9戦全勝。これは、プロゴルフトーナメントのホールインワン賞並の賞金額が人類勝者側に授与されることを思えば順当な結果でしたが、うち第4局は人類側が一時優勢を築き、早くも100万円獲得か、と観客を大いに沸かせました。

そのGPS将棋を追いつめたご本人のブログ記事でポイント解説が読めます。詳しくはそちらをお読みいただきたいのですが、ひとことで言えば、GPS将棋はまんまと人類の罠(アンチコンピュータ戦略)に嵌められ、駒損してしまったのです。

第22回世界コンピュータ将棋選手権を制し、第2回電王戦ではトップレベルのプロ棋士との対戦が控えているGPS将棋が、CPUコア数が少なかったとはいえ、信じられないような悪手を指してしまった理由は何でしょうか? 考えられる理由としては、(1)思考時間が短かったため読みが浅くなり、打ち込んだ角を捕獲される局面まで読めなかった。(2)駒損しても敵陣を乱して攻めているので優勢と判断した。等があります。この局面の場合、10手程度先を読めば駒損が判明すると思われ、これは数秒以内で読める範囲と思われますので、主な理由は(2)と推定されます。

しかし、駒損した後の手順をさらに深く読めなかったために、駒損による戦力不足によっていずれ人類側に態勢を立て直されてしまうことが判らなかった、と考えると、やはり読みが足りなかった、と推定できそうです。人間のエキスパートプレーヤーの場合、この種の攻めは一時的な勢いがあっても長続きしない、という判断を、読みだけでなく知識や経験である程度補えるので、たとえコンピュータより深く読めなくてもこのような無謀な手を避けられるのですが、コンピュータ将棋にはまだその部分に課題がある、といえるでしょう。対する人類には、そのような敵の弱点を察知し、敵を陥れようとする英知があるのです。

コンピュータ将棋の弱点が広く知られてしまい、次の2日目には弱点をさらに効果的に突こうとする猛者が多数GPS将棋に挑んでくると予想されますが、これはコンピュータ将棋にとってチャンスでもあります。コンピュータ将棋が次に克服すべき課題がこのトライアルマッチシリーズで明らかにされれば、格好の研究テーマになり、それはいずれコンピュータ将棋をもっと強くするでしょう。否、GPS将棋は次の週末までに対策を立ててくるかもしれず、その成果は間もなく見られるかもしれません。トライアルマッチシリーズ初日を観戦した方もそうでない方も、2日目以降にぜひ注目していただきたいと思います。

ところで、番組放送中、コンピュータが動作停止してしまい、ソフトを再起動させる、という場面が多数見られたことには驚かれた方も多かったと思います。これは企画の性質上認められていたコンピュータ将棋救済策と思われますが、世界コンピュータ将棋選手権ではこのような救済策は実施されません。世界コンピュータ将棋選手権では、コンピュータが動作停止したとみられる状況になっても、コンピュータに対して操作を行うことは認められていませんので、多くは停止したまま時間切れ負け、という扱いになります。世界コンピュータ将棋選手権に出場される開発者の皆さんには、頻繁に動作停止することのないよう慎重に開発していただくようお願いいたします。以上、ご参考までに。

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