Archive for2014/6

新刊紹介: ルポ 電王戦

ルポ 電王戦―人間 vs. コンピュータの真実 (NHK出版新書 436)

本書の著者、松本博文さんは、コンピュータ将棋選手権ネット中継を長年にわたって担当し、世界コンピュータ将棋選手権の模様をリアルタイムで伝えてきた人です。前世紀からいち早く「ネット中継」というスタイルを確立した将棋観戦記者の先駆けとしての経験を足掛かりに、コンピュータ将棋史の決定的な場面をこのブログで伝え、そしてそれらが本書にも記されています。加えて、あるときは日本将棋連盟のインサイダー、あるときは2年続けて「100万円チャレンジ」にてコンピュータ将棋をあと一歩まで追い詰めたプレイヤー、すなわち本書の重要人物としてたびたび著者自身が登場して読者を驚かせます。

しかし本書は「見聞録」や「漫遊記」ではなく、第24回世界コンピュータ将棋選手権のドラマからわずかひと月の興奮を伝える、おびただしい数の登場人物たちが怒涛のごとく描かれた「ルポ」です。特にコンピュータ将棋の開発者やその周囲を入念に取材し、技術的な記述も正確です。一方で、大山康晴、升田幸三の昭和の名棋士が遺した言葉を引くなど、コンピュータ将棋が半世紀近く、いかにしてプロ棋士と電王戦を争えるまでに強くなり続けたか、がプロ棋士や著名人の目を通して立体的にわかるお得な1冊にもなっています。そして、渡辺明竜王(当時)対Bonanza清水市代女流王将(当時)対あから2010の対戦を経て、多くの人々が抱いた百人百様の思いを束ねた米長邦雄永世棋聖の決断に導かれ、第1回第2回第3回の電王戦にて、計11局の過酷な、ゆえに歴史的なプロとコンピュータの戦いが繰り広げられます。

コンピュータ将棋選手権ネット中継では、著者は写真と局面図をふんだんに使って世界コンピュータ将棋選手権をリアルに伝えていますが、本書ではあえてそれらを封印して文字だけで全頁を書き切っています。それだけに立ち止まるきっかけがないまま一気に読み進めてしまうこと請け合い。コンピュータ将棋の開発者や熱心なウォッチャーの皆さんなら、場面が次々に脳裏に浮かんですらすらと読めるでしょう。人類とコンピュータの対戦はいかにあるべきか? あとがきの『本書は…』の筆者による総括を目にしたとき、誰もがそのテーマを語るにふさわしい論客となっているでしょう。

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将棋世界7月号に第24回世界コンピュータ将棋選手権と第3回電王戦記事

将棋世界 2014年 07月号 [雑誌]

月刊将棋世界2014年7月号にて、第24回世界コンピュータ将棋選手権の特集記事と、第3回電王戦の振り返り記事が、それぞれ10ページずつ掲載されています。前者は鈴木健二さん、後者は北野新太さんの執筆。

第24回世界コンピュータ将棋選手権特集記事『新星「Apery」大逆転で初優勝!!』は、全3日間の模様を余すところなく伝えていますが、今回は決勝リーグで2ゲーム差が覆る大きな逆転があったためか、最終日、特に後半戦の優勝決定までの模様に多くの誌面が割かれています。局面つき解説は決勝リーグから10局。現地大盤解説会での勝又六段遠山五段ほかの解説の模様、開発者へのインタビューに基づく技術解説も交えて熱戦の模様を伝えています。

特別寄稿『敗れてもなお』は、第3回電王戦に出場した5人の棋士全員へのインタビュー内容をもとに、対局前の心境と、棋士チームの1勝4敗という結果を受けての総括がプロ棋士の立場からつづられています。「事前貸し出しルールを活かしてもっと端的にコンピュータ将棋の弱点を突く戦略を採るべきだったのでは?」という疑問に対する答え、前回との微妙な雰囲気の違いは、コンピュータ将棋が前回からさらに進化したこと、そして今後の将棋電王戦がどうなっていくのか、など、コンピュータ将棋関係者にとっても関心を寄せずにはいられない論点を思わせられます。

このほか、飯島七段の連載講座では、第3回電王戦にて豊島七段に対してYSSが指した△6二玉について詳しく解説され、『ぼくはこうして強くなった』では森下九段第3回電王戦への出場について直接語っています。『ニコニコ超会議3「全員主役。」』では、コンピュータ将棋や電王手くんが登場した企画について書かれ…という具合に、将棋の話題として完全にコンピュータ将棋が定着しています。

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