ボナンザと勝負脳の化学反応


角川oneテーマ21 ボナンザVS勝負脳――最強将棋ソフトは人間を超えるか

渡辺竜王のブログエントリ

チェスの世界チャンピオン、カスパロフに勝利したディープブルーに触発された保木邦仁さんは、未だ人類のトップレベルに実力で追いついていない分野であるコンピュータ将棋プログラムの開発にのめりこみます。分子制御を研究する化学者としての学識と経験から、将棋の局面を分子に、指し手を分子の制御にあてはめるようにして独自の学習システムをつくりあげ、指し手の坩堝である大量の棋譜を入力します。これが作者も意図しなかったような個性的な棋風の将棋ソフト、ボナンザを生み出します。そしてインターネットでの公開、世界コンピュータ将棋選手権への出場、優勝と、まるで未知の化学反応が急速な連鎖を繰り返すように、歴史的なトッププロとの対局へと導かれていきます。

ボナンザを迎え撃つ渡辺明竜王は、ネットで公開されているボナンザが見せるさまざまな特徴のイメージを化学反応させ、逆にボナンザの棋風を徐々に解明し、綿密な対策を立てます。ところが実際に相まみえたボナンザは予想を超える化学変化を遂げて強くなっていました。渡辺竜王は苦戦を甘受して相手のミスを待つ姿勢へと変化し、大一番は終盤戦に突入します…。

本書はゲームプログラミングの解説や、異分野の技術を触媒として新たな学問的成果が生み出される過程の描写など、どちらかといえば科学技術方面の示唆に富んだ内容となっています。一方、純粋な将棋ファンにとっても、トッププロ棋士が対戦相手を分析し、作戦を構想して対局に臨み、終局するまでの過程を雄弁に語った、貴重な記録としての価値を見出せるでしょう。対局後の両著者の対談には対決ムードこそ伺えないものの、コンピュータと将棋の未知の化合物に何を期待し、また何にこだわっていくのか、本書後半のそれぞれの技術解説で両著者はまったく異なる立場を表明しています。

コンピュータが垣間見せた化学変化がいかに成し遂げられ、そしてそれは将来さらに人類を驚かせ続けるのか。人類の創造性が垣間見せた化学変化はいかにコンピュータと競い、コンピュータの偉大な目標たり続けるのか。そんなイメージの化学反応を楽しみながら読み進めていただきたい一冊です。



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