将棋世界に「羽生善治が敗れる日」


将棋世界2009年1月号に、「コンピュータ将棋特別対談 - 羽生善治が敗れる日」と題して、YSS開発者の山下さんと棚瀬将棋開発者の棚瀬さんによる聞き手を交えての対談記事が掲載されています。

前々回ご紹介した週刊将棋と違って意外にもゲーム・プログラミング・ワークショップ2008(GPW-08)での清水上さん・加藤さんとコンピュータ将棋のリベンジマッチは報じないのか? と思いきや、対談記事のさなかに勝又六段の解説つきで全棋譜が紹介されています。とはいえ対談記事があることは1月号の表紙には書かれておらず、目次にもあまり目立たない感じで書かれていて、ましてリベンジマッチのことは目次にも書かれていませんので、将棋世界を毎月読んでいる人でも見落としてしまうかも、という微妙な感じ。このあたり、読売新聞社を優先掲載紙とみなしての配慮なのかもしれません。

対談はGPW-08の直後に行われたもののようです。コンピュータ将棋の過去・現在・未来のこと、コンピュータ将棋開発者の心意気など、9ページにわたって広範囲の話題がフランクに語られています。機械学習やモンテカルロ法(による探索)にも話題が及んでいて、コンピュータ将棋か人間か、というだけの興味では終わっていません。とはいえ表題からも明らかなように、Xデーはいつか、という展望にももちろん答えています。包み隠さない語り口は、2008年11月号まで将棋世界の目玉連載であった「イメージと読みの大局観」とも通じる精神が感じられます。

92ページより:

棚瀬 いいアイデアは言いたくなるんですよ。隠してると、そのうち古くなって誰も聞きたくなくなってしまいますしね。そもそも情報を守ることに労力を使うのは無駄です。そういう負の方向にエネルギーを費やすより、オープンにして、真似されたらまた次のアイデアを生み出せばいい。で、ちょっと先に行くと。もちろん、またすぐに追いつかれるわけですけど、そういうポジティブな考え方の人のほうが、結局は生き残ってる気がしますね。

山下 それにプログラマーという人種は、自分の技法を自慢したがる人が多いんですよ。「俺こんなの見つけて強くなったぞ」って、基本的にみんな言いたくてうずうずしてるんで。ちょっとつつくと、快く教えてくれますね。

ネット社会でも今や常識となった、オープンであることの価値は、コンピュータ将棋では黎明期から一貫して培われています。人間がコンピュータに勝つ方法もお二人の口からオープンになっていますので、自宅のパソコンにインストールされたコンピュータ将棋にリベンジしたい人もぜひご一読を。

コメント:3個

  1. 小宮より、 2008/12/6(土):

    週刊将棋は買い損なったので、こちらは明日本屋で買おうと思います

  2. かず@なのはより、 2008/12/7(日):

    弱点をさらした上で「本気でやったらあと2年」と言ってしまえるところが怖いですね…。
    来年はその穴も塞げると(あるいは既に?)いう自信にも見えます。
    来年はその無敵っぷりに歩み寄りたいです。

  3. 山田 剛より、 2008/12/9(火):

    あと何年、という発言は、必ずしも確信を伴ったものではないような気がします。ただ、これまでも、停滞気味か…と思われたところで新しい技術が出てきて乗り越える、ということを繰り返していますから、あまり手堅い予想をしても当たらない、という経験則が最大の裏づけだと思います。

    で、その新しい技術はどこから出てくるかわからないので、トップクラスの人たちだけでなく、選手権をはじめとしてあらゆる舞台に注目、なわけです。

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