十八世 “人間” 名人

2年前の2005年、第3回国際将棋フォーラムにて、コンピュータと人間の名人との記念対局が行われました。コンピュータは、同フォーラム内で開催された第3回コンピュータ将棋王者決定戦に優勝したYSS。優勝決定戦となった第6回戦で終盤に大逆転勝ちを収めての対局資格獲得でした。そのYSSを角落ちの上手として迎えたのが、当時在位3期目の森内俊之名人でした。

YSSのコンピュータワールド全開の指し回しに戸惑いを覚えたものの、手厚く貫禄を見せつけた森内名人は、その後昨年に続き今年も名人位を防衛十八世名人は、公の場で当代トップクラスのコンピュータに大駒を落とした、恐らく最後の人間になるであろう人が、就位することになりました。おめでとうございます。

第六局に大逆転負けを喫しながら踏みとどまった名人戦最終局。その最後の場面は、前局の事件の再来を想起させる緊迫したものでした。実は私事ながら、最終局2日目に東京将棋会館にて行われた大盤解説会を見学したのですが、同解説会で解説されていた棋聖戦第三局(同時2局解説のお得感につられて行きました)の寄せの鮮やかさとは対照的に郷田九段の粘りでもつれ、解説者の先崎八段千葉女流三段も含め会場全体が騒然としていました。蒼ざめながらも土壇場で辛くも悪夢を振り払って勝利した新永世名人の姿は、人間味にあふれていました。

ここでコンピュータ将棋分野の興味はふたつ。まず、冷徹な計算機なら郷田九段の玉を難なく寄せきれたでしょうか? 大勢決したと思われた133手目の局面を筆者の手元の将棋ソフトに指し継がせてみると、泥仕合に突入してしまいました。先手玉は追い詰められながらも意外に詰めろが続きにくい形なので、2手すきなど詰めろ以外の過程を通らざるを得ず、するとコンピュータにとって俄然見えにくい形になるようです。さらにいえば、本局のような入玉含みの長い終盤を乗り切ることや、棋聖戦第三局渡辺竜王の鮮やかな寄せを真似ることは、相当な技術の向上がないと厳しそうです。詰みを読む能力ではコンピュータが人間の遥か斜め上を行っているため、寄せが無条件に強いと思われがちですが、渡辺明竜王vsボナンザの終盤に見られるように、必至をかける以前の局面はまだまだコンピュータにとって相当な難題です。人間たるもの、詰まされるまで諦めてはいけない、ということを改めて痛感させられる昨今です。

もうひとつ、ディープブルーvsカスパロフのときから語られているように、人間とコンピュータが戦うとき、人間にとっての体力の限界は相当なハンディキャップであるということ。2日目も深夜に及ぶ名人戦で幾多の事件が起こるのもこのためではないかと思われます(第六局に関しては、郷田九段の極限的に研ぎ澄まされた執念も無視できなさそうですが)。人間vsコンピュータでは、コンピュータに消費電力制限を課す、というのも、環境の世紀の対決の一案かもしれません。

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